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2008年6月17日 (火)

夕方の三十分

B658_4


6月15日は父の日でしたね

最近は父の日も、ギフト商戦で結構にぎやかになりました

昔は、母の日と比べるとそんなに目立たない日でした

私も、母の日は小さい頃から楽しみにしていて、小さいながらも何をプレゼントしようかな?喜んでくれるかしら?とワクワクしたものです

先月の母の日にも、実母にも義母にも花を贈りました

 

私が父の日にプレゼントを贈ることが習慣になったのは、結婚して、もう一人の父ができてからです

プレゼントを何にするか考えるのはいつも私の役割です

一昨年はパジャマを贈りました

毎年何を贈るか考えて、二人の父に私が気に入った同じものを贈っていました

だから、二人の父はおそろいの品をいくつか持っていたことになります

お揃いのパジャマを着て眠っているんだと想像するとちょっと可笑しくなります

それは、誰も知らない私だけの楽しみでした

 

でも、もう昨年からお揃いの品を買うことはなくなりました

私の父は昨年の1月に亡くなったからです

父の日の私の楽しみも半減しました

でも、命日とは違った意味で、父の日は私が父を思い出す日となりました

 

父の晩年の趣味は木彫りをすることでした

花や風景を彫るのが好きでした

そんな父が、彫刻刀で彫り進めながら未完成になったのは、「菩薩」さまの顔の木彫りでした

時々、父の使っていた彫刻刀を手にとっては「菩薩」さまの顔を彫り進めようと思うのですが、どうしても一刀を入れることができないままです

いつかは、父のその忘れ物を完成させようと決心していますが、彫刻刀を入れるのはもうしばらく時間がかかりそうです

 

今年もプレゼントは一人分でした

もう一つの贈り物は、父と幼い頃の私の思い出に浸ることでした

 

そんな時に、こんな、父と娘を描いた、ユーモラスでほほえましい詩を見つけました

 

B658_2

 


夕方の三十分      黒田三郎

 

 

コンロから御飯をおろす

卵を割ってかきまぜる

合間にウィスキーをひと口飲む

折紙で赤い鶴を折る

ネギを切る

一畳に足りない台所につっ立ったままで

夕方の三十分

 

僕は腕のいいコックで

酒飲みで

オトーチャマ

小さなユリの御機嫌とりまで

いっぺんにやらなきゃならん

半日他人の家で暮らしたので

小さなユリはいっぺんにいろんなことを言う

 

「ホンヨンデェ オトーチャマ」

「コノヒモホドイテェ オトーチャマ」

「ココハサミデキッテェ オトーチャマ」

卵焼きをかえそうと

一心不乱のところに

あわててユリが駆けこんでくる

「オシッコデルノー オトーチャマ」

だんだん僕は不機嫌になってくる

 

化学調味料をひとさじ

フライパンをひとゆすり

ウィスキィーをがぶりとひと口

だんだん小さなユリも不機嫌になってくる

「ハヤクココキッテヨォ  オトー」

「ハヤクー」

 

かんしゃくもちのおやじが怒鳴る

「自分でしなさい 自分でぇ」

かんしゃくもちの娘がやりかえす

「ヨッパライ グズ ジジイ」

おやじが怒なって娘のお尻をたたく

小さなユリが泣く

大きな大きな声で泣く

 

それから

やがて

しずかで美しい時間が

やってくる

おやじは素直にやさしくなる

小さなユリも素直にやさしくなる

食卓に向かい合ってふたり坐る

 

今の私には、甘えたりケンカをしたり、そして、しずかで美しい時間を過ごそうにも、その父はもういません

これからは、父の日のせめて夕方の三十分、亡き父を思い出して一人で静かな時間を過ごそうと思っています

そして、いつの日か、彫刻刀を握って、父の形見を完成させたいと願っています


B658_5

 

 

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コメント

お父さんに対する愛情溢れた文章、感動しました

私も先日、

「何もプレゼントがなくてごめんね」と娘から一言
「なんもなんもいらないさ」と私

三十路を前にして病で働くことも出来ない娘なのですが、
その一言が何よりの父の日のプレゼントでした

バニラさんの今日の日記
きっとお父さんも読んでいますよ^^

投稿: tetuya | 2008年6月17日 (火) 19時16分

素敵な詩をありがとうございます。

先週の日曜日父母に会いました。
おやじは・・・
 孫をみて~ちょっと見ないうちに大きくなったな~って

ボクは・・・
 オヤジをみて~見ないうちに年取ったな~って

止めようのない時の流れを感じました。。。

投稿: ヒロぴょん | 2008年6月17日 (火) 20時48分

> お揃いのパジャマを着て眠っているんだと想像するとちょっと可笑しくなります
良い感じですね
マンガの吹き出しの中にお揃いのパジャマを着たお二人が目に見えるようです。
して、やったりですね(笑)

> 未完成になったのは、「菩薩」さまの顔の木彫りでした
未完成が菩薩とは・・・
これは、引き継ぐための未完成のようですね
完成に向かって、その一刀の時期が来たら教えてください

> しずかで美しい時間が やってくる
進んでいく時間の中にある小さな葛藤が目に浮かびますよ
小さなぶつかりは、幸せを得るための話し合いだったのですね
楽しいかたらいですね

投稿: 月の沙漠 | 2008年6月18日 (水) 07時17分

「もうひとつの贈り物」が出来るだけ、お父様も沢山贈り物を残してくださったのでしょうね。未完の菩薩像を残して逝かれたことにも、静かで深いお人柄を感じます。それをいつか完成させたいと思っていらっしゃるvanillaさんもお父様から素晴らしいものを受け継いでいらっしゃるのでしょう。

「落~ちてきたら~」http://jp.youtube.com/watch?v=kHd32fK3GzM 紙風船」も黒田さんの作詩だったんですね。
菩薩のお顔に取り掛かり、完成に近づくまで、vanilla さんの
「夕方の30分」も充実していきますように!

投稿: | 2008年6月18日 (水) 12時09分

すみません、「紙風船」のコメントを書いたのは私です。私の注意力も後期~に近づいて来たようです。娘たちに残すものを考えておいた方がいいかな。(笑ってゴマカス、、、)

投稿: joy | 2008年6月18日 (水) 13時53分

tetuyaさん

tetuyaさんと娘さんの関係、とてもいい親子関係を築かれてみえますね

>「何もプレゼントがなくてごめんね」と娘から一言
>「なんもなんもいらないさ」と私

う~~ん。素敵です^^
父親にとっては、娘の優しい言葉がなによりのプレゼントなのでしょうね

投稿: vanilla | 2008年6月18日 (水) 15時10分

ヒロぴょんさん

>止めようのない時の流れを感じました。。。
私は、最近時間が経つのがとても早く感じられます(笑)
ヒロぴょんさん、ご両親が元気でいらっしゃる間にうんと親孝行なさってくださいね
お父さまにとっては、お孫さんの成長が、何よりのプレゼントなのかもしれませんね^^

投稿: vanilla | 2008年6月18日 (水) 15時21分

月の砂漠さん

>マンガの吹き出しの中にお揃いのパジャマを着たお二人が目に見えるようです
ははは~
全くそういう状況でした(大笑)

父が亡くなって、彫りかけの菩薩さまを見た時は、そこにいたみんなが一瞬固まったようになった気がしました
私には木彫りの知識も技術もありませんが、何時か・・・と思っています

>小さなぶつかりは、幸せを得るための話し合いだったのですね
>楽しいかたらいですね
その通りですね・・・とっても微笑ましい父と娘の風景でしょ?^^

投稿: vanilla | 2008年6月18日 (水) 15時25分

joyさん

サインがなくても、このコメントはjoyさんだとすぐにわかりましたよ^^

父は忙しい人でしたので、小さい頃に父に遊んでもらった記憶はあまりありません
いつもいろんなところに連れて行ってくれたのは祖父でした
だから、この詩のような関係にちょっと憧れも感じたりします
これから父を思う時間の中ではこんな親子でいられたらと思います^^

そんなに笑顔を見せる父ではありませんでしたが、亡くなってから、父を思い出すと
決まって、笑顔の父が浮かんできます 不思議ですね・・・やっぱり笑顔の父が好きだったのだと思います

せっかく貼っていただいた「紙風船」削除されたみたいですので、もう一度貼りますね
この詩も大好きな詩です

http://jp.youtube.com/watch?v=kHd32fK3GzM

「紙風船」黒田三郎

落ちてきたら
今度は
もっと高く
もっともっと高く
何度でも
打ち上げよう

美しい
願いごとのように

投稿: vanilla | 2008年6月18日 (水) 15時33分

ごぶさたでした(汗)
んー
これは、どこかで目にしたことがある詩です(苦笑)

やはりいいですね。


彫刻刀を握り締め掘りかけの菩薩様を見つめる

意を決し一刀を刻もうとするその時、
全身に力が入りすぎているのに気付く

深い溜息のあとさらに深い深呼吸をして心を軽くする、

すっと彫刻刀が木肌に入っていく
「大丈夫、あたしはやれる!」
と、自分に言い聞かせるaoiさんであった・・・

なーんて、また妄想してしまいました。

投稿: メジロ3号 | 2008年6月18日 (水) 21時24分

父があって、私がいた時代、
父があって、私も父となった時代、
もう少したてば私の父が亡くなり、
もう少したてば、息子が父になる。

今は第2段階、一番いい時代なのかも。
ちょっとボケ始めた父が段々とかわいくなってきた。
私の倍の速度で父が年をとっていくようだ。
そんなに急がないでゆっくりゆっくり。

投稿: ロム | 2008年6月19日 (木) 15時38分

メジロ3号さん

お返事遅くなりごめんなさい
父と娘の「父の日」と言えば、やはりこの詩がどうしても思い出されました・・・coldsweats01

メジロさんの妄想に大笑い!
でも、メジロ3号さんの妄想の中の私のように、現実の私も頑張らないと・・・ね^^

コメントありがとうございましたm(_ _)m♪

投稿: vanilla | 2008年6月20日 (金) 10時41分

ロムさん

おはようございますhappy01

>今は第2段階、一番いい時代なのかも。
お父さまがいて、父親であるロムさんがいて、ロムさんの息子さんも父親になって・・・
そんな時まで、お父さまは元気でいらっしゃいますよ!きっと・・・

私は、父は亡くなりましたが、母は元気でいます
何でも器用にこなす母でしたので、いつまでも昔のようにできると思ってると、ある日、そうじゃないことを知って戸惑うことがあります
>そんなに急がないでゆっくりゆっくり
ロムさんのそんな想いがよくわかります・・・

投稿: vanilla | 2008年6月20日 (金) 10時53分

こんにちは!おひさしぶりです。

vanillaさんのお父さまが他界されてもうそんなになるんです

ね!次第とお淋しゅうございましょう。時折、物憂いこと

でしょう。

でもお父上 生前も、亡くなられても、vanillaさんに想って

もらってお幸せですね!たぶん草葉の陰から見守っておられま

すよ!きっと。

わたしは、実父も義父も5年内わになくしました。

かなり環境が変わりました。

生前も、亡くなってからも親不孝ばかりです。

菩薩を彫っておられたってことですが、なかなか継いでするの

は至難でしょう!それこそ悟りの境地に近ずかんと。

投稿: カバディーtakennaka | 2008年6月21日 (土) 11時51分

カバディーさん

こんばんは~*^-^*ニコッ♪ 

>かなり環境が変わりました。
私は一緒に暮らしていたわけではないので、生活は変わらないですが、それでも、実家に行くと、父がいつも座っていた場所に自然と目がいきますし、そこに父がいないのは寂しいものです・・・

>菩薩を彫っておられたってことですが、
木彫りと言っても、レリーフのようなものなのです
ごめんなさい・・・私の書き方が悪くって・・・
「花や風景を彫るのが好きでした」
と書いたので、わかってもらえたかなとも思ったのですが
まあ、いずれにしても今の私の技術では無理ですけれどねcoldsweats01

投稿: vanilla | 2008年6月22日 (日) 19時39分

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