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2009年5月 8日 (金)

それは運命だった-映画「スラムドッグ$ミリオネア」

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今年のアカデミー賞は「ベンジャミン・バトン」で決まりだと思っていました 
強力なライバル作品があるとは聞いていましたが・・・。
そして結果は「ベンジャミン・バトン」は完全に封じこめられ、作品賞や監督賞など8部門でオスカーを獲得したのは「スラムドッグ$ミリオネア」でした 
イギリス人監督ダニーボイルがインドを舞台に選び、現地インド人をたくさん動員した作品です 
華やかなスターは誰一人として出演しておらず、劇場公開も危うかったと聴く作品です アカデミー賞が決まってから日本の各地で上映され始めました 
観に行くのにどうも決心がつかず迷っていましたが、あの「ベンジャミン・バトン」を抑えてオスカーをとったのだから魅力ある作品なのだろうと思い切って観にいきました

映画が始まるやいなや目はスクリーンに釘づけ、息もつかせぬストーリーの展開に、2時間はあっという間に過ぎ去ってしまいました

スラム街で生まれ育ち、学問はもちろん学校へ通うことすらなかった無学な青年がクイズミリオネアに出場し正解を続け誰もが成しえなかった2000万ルピーという大金を手にするというなんともハッピーエンドなストーリーである 
しかし、この映画が平板なハッピーストーリーに終わらないために巧みな仕組みがしかけられている 
このスラム出身の青年の名はジャマール、ジャマールはクイズミリオネアで司会の思惑を次々と破り1000万ルピーの問題まで正解を出してしまう 
それがために狡猾な司会者から警察に「詐欺者」として通報、逮捕され過酷な尋問を受けることになる 
拷問のような尋問に答えていく中でジャマールの生き様が語られることになる 
その生き様の描写がまさにかつてのインド社会の生々しいスラム街を描く社会性である 日本にいては想像を絶するスラムで生きる子どもたち、大人たちの弱肉強食の世界、難問であったクイズの正解はジャマールのそんなスラムを生き抜いてきた体験の中で刻み込まれた思い出にあった 
つまりジャマールの正解は運ではなく、運命であったという必然性を導き出すのである

この映画の価値を高めている社会性ともう一つの柱が「純愛」である 
ジャマールはお金持ちになりたくてクイズ番組に出たのではない 
少年期に出会ったラティカという愛する女性に自分の存在を示すためにクイズ番組に出場したのである 
スラム街を強く生き抜いてきたジャマールの心を支えていたのはこのラティカである 
しかもその愛する女性はかつて絆強く共に生き抜いてきた兄サリームが裏社会で生きるようになってしまい連れ去ってしまったのである 
実は全編、この純愛がストーリーを貫いているのである 
そして、ジャマールは最後のクイズにも正解を出し、最愛のラティカとも再会をはたす

ネタバレほどストーリーを追ってしまいました すみません 
どうしても腑に落ちない点が一つだけありました 
最後のクイズ問題の解き方です 
この仕掛けからすれば、最後のクイズの正解にジャマールの最も忘れ難い思い出の1シーンをもってくれば完璧なのに・・・という思いが残りました 
ところがこの最後のクイズだけはジャマールの経験にも答えはありませんでした 
最後の最後は運なの???と言いたくなる運びです 
ただ観客をドキドキするための演出なのでしょうか
この疑問が頭から離れず、2回目を観にいってしまいました 
そこで見つけたこと―ジャマールは最後のクイズが解けず、最後のライフライン「テレフォン」を使用します 
かけた相手はラティカを連れ去った憎むべき兄でした 
最後に賭けた相手が兄、ここに「社会性」「純愛」ともう一本の柱がありました 
「兄弟の絆」です 
裏社会を生きてきた兄もまたこのジャマールの兄弟愛に応えるかのように命を賭して弟に報います

フィナーレは出演者多数によるダンスでした 
やっぱりインド映画を意識していました(笑)

「ベンジャミン・バトン」=数奇な運命は「スラムドッグ$ミリオネア」=純愛の運命に負けてしまいましたか・・・ 
うーん、ちょっと複雑な気持ちです

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映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

よく出来たストーリーですよね
子役の子がまた、可愛くて
シネマパラダイスを彷彿させる子供で
でもあの理不尽さに
私はめげてしまいました(;;;´Д`)ゝ
お母さんさえ、あんな理不尽な死に方をしなければなんて
入り込んで、痛みを感じてしまいましたね
フィクションではあるけれどもフィクションでない
ムンバイという、今のITインドを象徴する街を
描きだしてましたね

投稿: 夢見る夢子 | 2009年5月 8日 (金) 14時05分

vanillaさん、こんにちは♪
8部門でオスカーをとった作品ということは
知っていましたが、まだ見ていません。
vanillaさんの記事を読んだら
俄然興味がわいてきました。
フィナーレはダンスでしたか。やはりインド映画ですね。
来週あたり行ってみようかな・・・

投稿: hiro | 2009年5月 8日 (金) 14時59分

こんばんは
素晴らしい映画を二度も見に行かれたのですね。
素敵~!
私も海外ドラマなど、内容に追いつけず疑問が残ることが多いです。
でも二度は行かなくて・・・・
その点も熱心ではありません。

今日は偶然にも映画に行ってきましたよ。
この映画ではなくて、「グラン・トリノ」ですが。
むかし、むかし、ローハイドのロディだったクリント・イーストウッド、素晴らしくいい男になりましたね~
彼がそこに立つだけで哲学が見えるかのよう
この映画も素晴らしかったです。
とっても大切なものをいただいてきました。

投稿: shibata | 2009年5月 8日 (金) 19時49分

(>華やかなスターは誰一人として出演しておらず、劇場公開も危うかった)作品がアカデミー賞

この辺にも夢を見たい人々の夢を担うというこの映画自体の運命のようなものを感じます。

2回目を見に行く、すごい探究心ですね。

投稿: | 2009年5月 9日 (土) 17時20分

夢見る夢子さん

こんばんは
>シネマパラダイスを彷彿させる子供で
そうそう、ほんとに可愛い子でしたね
声も可愛かったです(o^-^o)

>フィクションではあるけれどもフィクションでない
インドという国に対する知識のない私には、とてもショッキングな映像でした
インドのスラム街はこんなのかと・・・

でも、作品としてはとってもよくできていましたね
脚本もすばらしかったし、伏線が綺麗に張られていたし
音楽も映像も最高でした

投稿: vanilla | 2009年5月 9日 (土) 22時07分

hiroさん

こんばんは
ずいぶんネタばれになってしまうことも書いてしまいました(いつものことですが・・・)
でも、ご覧になったらきっと、ほんとにすごい映画だな、と感じられると思います
ファーストシーンからすっと映画の中に入り込めること間違いなしです
DVDになってからでも、是非ごらんになってください(o^-^o)

投稿: vanilla | 2009年5月 9日 (土) 22時11分

shibataさん

こんばんは
この映画を二度観たのは、ほんとはただもう一度観たかったからなんです(笑)
「ベンジャミンバトン」も、もう一回観たくて二度観ました
どちらの作品も二度観てもあきることなく、一度目には気付かなかったことに気が付いたり感動したりとそれなりに収穫がありました
私もあまり同じ映画を二度観ることはないのですが・・・
あ、でも「ロード・オブ・ザ・リング」は三回観に行きました(*´ェ`*)


shibataさん、私も先日「グラン・トリノ」観てきました
ほんとにすばらしい映画でしたね
最後は涙がこみ上げてきて止まりませんでした
私は「夕陽のガンマン」の頃のクリント・イーストウッドを思い出していました
クリント・イーストウッドはすばらしい俳優だけでなく、すばらしい映画監督になりましたね
ここ何年も彼の作品から感動をもらっています

投稿: vanilla | 2009年5月 9日 (土) 22時39分

どなたかわかりませんが、
コメントありがとうございますm(_ _)m

華やかなスターは誰一人として出演しておらず、劇場公開も危うかった作品がアカデミー賞、
確かにそれがこの映画の運命だったかもしれませんが、
賞を取ったことが納得できる、すばらしい映画でした


>2回目を見に行く、すごい探究心ですね。
いえいえ。ほんとは気まぐれなのですよ(o^-^o)

投稿: vanilla | 2009年5月 9日 (土) 22時47分

またやりました。名無氏は私です。

原作者は外交官で今夏大阪の領事館勤務になる予定だそうですね。

投稿: joy | 2009年5月12日 (火) 21時59分

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